これまでフィリピンで日本食カフェを経営する中で、多くのスタッフを採用してきました。
前回の記事では「面接で何を見ているのか」についてお話ししましたが、今回は試用期間(トライアル期間)がなぜ重要なのかについて、私自身の経験を交えながらお話しします。
実際に私は、試用期間中に契約を終了したスタッフが何人かいます。
もちろん、それは決して望んでいたことではありません。
しかし、その経験があったからこそ、「採用で本当に大切なこと」が見えてきました。
この記事では、飲食店経営者として私が試用期間で必ず確認しているポイントと、実際にあった出来事をご紹介します。
面接だけでは分からないことがある
面接ではできる限り相手の考え方や人柄を知ろうとします。
「この人と一緒に働いてみたい」
そう思えた方だけに試用期間へ進んでもらいます。
しかし、お店を始めた頃の私は、
「笑顔が素敵だから大丈夫だろう」
「人柄が良さそうだから問題ないだろう」
そんなふうに考えていました。
ところが、実際に働き始めると、面接では見えなかった部分が少しずつ見えてきます。
逆に、面接では緊張していた人が、現場では驚くほど頼れるスタッフになることもあります。
だからこそ、試用期間は会社がお互いを知るための大切な時間だと考えています。
企業側にとっては「この人は職場に合うか」を判断する期間。
働く側にとっても、「この仕事は自分に合っているか」を確認する期間です。
試用期間で私が必ず見る3つのポイント
1. 挨拶ができるか
一番最初に見るのは、意外かもしれませんが挨拶です。
例えば、
- おはようございます
- いらっしゃいませ
- ありがとうございました
- お疲れさまでした
どれも接客業では当たり前のことです。
私の経験では、後から勤務態度に問題が出るスタッフほど、この基本的な挨拶が徐々にできなくなる傾向がありました。
もちろん最初は緊張して声が小さくても構いません。
慣れれば自然とできるようになるからです。
しかし、何度伝えても改善されない場合は、お客様だけではなく、一緒に働くスタッフにも悪い影響を与えてしまいます。
お客様は料理だけではなく、お店全体の雰囲気も見ています。
だから私は、試用期間中の挨拶を非常に重視しています。
2. 「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えるか
次に大切なのが、
感謝と謝罪が自然にできるかどうかです。
誰かに助けてもらったら
「ありがとうございます」
失敗したら
「すみません」
これは社会人として基本ですが、実際には苦手な人も少なくありません。
特に気になるのは、
- すぐ言い訳をする
- 人のせいにする
- 自分の責任を認めない
というタイプです。
もちろん、失敗は誰でもします。
私自身も数え切れないほど失敗してきました。
大切なのは失敗をしないことではありません。
失敗を認め、次に活かそうとする姿勢です。
この姿勢がある人は、時間をかけて着実に成長していきます。
3. 時間を守れるか
三つ目は時間です。
遅刻が多い人は、仕事全体にもルーズさが表れることがあります。
例えば、
- 今やるべき仕事を後回しにする
- 小さな問題を放置する
- 約束を守れない
もちろん、交通渋滞や体調不良など避けられない事情もあります。
その場合は問題ありません。
私が重視しているのは、
遅れると分かった時点で連絡ができるか
ということです。
お店はチームで動いています。
情報共有ができる人は、周りからも信頼されます。
実際にあった出来事① エアコンを消し忘れたスタッフ
ある日、閉店後にスタッフがエアコンを消し忘れて帰ってしまいました。
翌朝、お店へ行くとエアコンが一晩中動き続けていました。
そこでスタッフへ
「昨日エアコンがついたままでしたよ」
と伝えました。
責任感のあるスタッフは、
「申し訳ありませんでした。次から気を付けます。」
と素直に謝ります。
そして、このようなスタッフは同じミスを繰り返さないことが多いです。
一方、別のスタッフはこう言いました。
「お客様が閉店後も残っていたので消せませんでした。」
事情は本当にそうだったのかもしれません。
しかし私が聞きたかったのは、理由ではありません。
まず最初の一言が
「すみません」
であることです。
その一言があれば、
「次からどう改善しようか」
という前向きな話ができます。
ところが最初から言い訳になると、お互いに建設的な話がしにくくなってしまいます。
実際にあった出来事② 自分のやりたい仕事しかしないスタッフ
もう一人、今でも印象に残っているスタッフがいます。
その人は、自分の好きな仕事しかしませんでした。
ベテランスタッフが炎天下でたこ焼きを焼いている一方、そのスタッフは店内でスマートフォンを見ている時間が長かったのです。
私は最初、
「まだ慣れていないだけだろう」
と思い、様子を見ることにしました。
しかし状況は変わりませんでした。
店内にも仕事はたくさんあります。
それでも自分から仕事を探そうとはしません。
料理の注文が入ると、自分では作れないため、外で忙しく働くスタッフを呼びに行くだけでした。
その結果、
- ベテランスタッフが外と店内を何度も往復する
- 他のスタッフの負担だけが増える
という状況になってしまいました。
私は何度か、
- 周囲への配慮
- 自分から動くこと
- 最後まで責任を持つこと
を伝えました。
しかし試用期間中に改善は見られず、最終的には契約を終了しました。
試用期間は私一人で判断しない
試用期間では、もちろん私自身もスタッフの様子を見ています。
しかし、それ以上に大切にしていることがあります。
それは、
一緒に働くスタッフの意見を聞くことです。
例えば、
- 一緒に仕事を続けられそう?
- 長く働けそう?
- みんなで食事に行っても楽しく過ごせそう?
そんな率直な感想を聞きます。
すると、私が気付いていなかった問題が見えてくることがあります。
店長が見える範囲には限界があります。
だから私は、毎日一緒に働いているスタッフの声も採用判断に反映しています。
技術は教えられる。でも姿勢は簡単には変えられない
料理は教えられます。
掃除の仕方も教えられます。
接客の流れも練習できます。
しかし、
- 挨拶
- 返事
- 感謝
- 謝罪
こうした基本的な姿勢は、それまで積み重ねてきた習慣が大きく影響します。
もちろん、人は変われます。
ただし、それは短い試用期間で簡単に変わるものではありません。
だから私は技術よりも、
人としての基本的なコミュニケーション
を最も重視しています。
試用期間はお互いを知るための大切な時間
試用期間は、会社がスタッフを評価するためだけの制度ではありません。
働く側も、
- この職場は自分に合っているか
- この仕事を続けられそうか
を判断する期間でもあります。
だからこそ、お互いが納得したうえで本採用へ進むことが大切です。
まとめ
私が試用期間で重視しているポイントは次の3つです。
- 挨拶がきちんとできること
- 「ありがとう」と「ごめんなさい」が自然に言えること
- 時間を守り、連絡をきちんとできること
仕事の技術はあとから身につけられます。
しかし、人としての基本的な姿勢は、お店の雰囲気やチームワーク、お客様の印象にも大きく影響します。
だから私は、試用期間をとても大切にしています。
これはフィリピンだけの話ではありません。
日本でも、多くの国でも共通する考え方ではないでしょうか。


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